忘却の勇者

刹那、一発の銃声が辺りに響いた。


オレオの右腕をかすめた銃弾は、背後に立つレインのふとももを射抜いた。


小さい悲鳴をあげながらその場に倒れるレイン。


オレオは咄嗟に腰の黒刀に手を伸ばすが、眉間に銃口を突き付けられ身動きを封じられた。


エメラルドグリーンの双眸が、オレオを見つめる。


「もう一度魔法を放とうとしたら、次は勇者の眉間に穴が開く」


脅し文句は眼前にいるオレオではなく、銃弾に倒れたレインにと送られた。


マリの治癒魔法を受けながら、レインは氷蒼の瞳を歪ませながらケイを睨みつける。


「哀れで愚かなのは貴様だ! なにも知らないくせにアモス様を貶して、貴様はただ戦争がしたいだけなんだ! 理由などなんでもいいんだろう!」


レインの叫び。ケイは視線だけ背後に向けると、ふっと口元に冷笑を刻んだ。


「勘違いしてもらっては困る。戦争はあくまで手段であり目的ではない。誰も戦争など望んではいないが、目的のためには血の道を進む覚悟も必要なのだ」
< 366 / 581 >

この作品をシェア

pagetop