忘却の勇者
最悪の考えが脳裏をよぎる。
勇者の最大の敵は、魔王や魔物などではなく……。
六畳間の小さな一室。
ベッドと足の短い机、部屋の隅には個室のトイレが設置されている。
ベッドの脇に腰かけているのはオレオ。
そして室内の入口には、エクターが監視を続けていた。
マリやレインと違い、身体の構造が根本的に違う勇者体質のオレオは魔吸石の効果が効きづらい。
そもそも魔法をほとんど使わない肉弾戦が得意なオレオ。魔吸石を付けても意味がない。
そして人並み外れた馬鹿力を持つオレオ。
その気になれば牢獄の鉄格子すら素手で破壊することが可能な勇者のパワー。
牢獄も一般の兵士も勇者の前では無意味。