忘却の勇者
そこで唯一、勇者の力を無力化できるエクターが監視役に抜擢された。
黒刀と聖剣は、机の上に無造作に置かれている。
武器を敢えて回収しなかったのは、誰も聖剣に触れることが出来なかったことと、武器があろうとなかろうと対した差はないこと、そして十三騎士であるエクターの時魔法に絶対なる信頼を持っているからだ。
一人だけ軟禁されている場所が狭いのは、エクターの目が届く範囲にオレオを監視したいため。
扉に背を預け、腕を組む。
「本当はケイさんも、戦争はしたくないんだ」
体勢を崩さずに、誤解を解こうとエクターは考えを巡らせる。
どのように説明するべきか思い悩むが、良い言葉など浮かばない。
「議会の決議は国民の意思と一緒で……。決定には逆らえないし、もし逆らいでもしたら今の立場を追われることになっちゃう。
軍部の上層部には過激派の一派もいるし、ただでさえあの若さで軍のトップに立ったから、ケイさんを敵視して失脚させようと荒探しをしてる奴らもいるし……」
口にしている途中で、これでは言い訳にしか聞こえないと気付く。