忘却の勇者
言葉に詰まる。
今更なにを言っても遅いだろう。
けれどこれだけは言わないといけない。誤解を生んだままではいけない。
エクターは必死に言葉を紡ぐ。
「つまりオレが言いたいのは、ケイさんは少しでも多くの人を助けるために戦争という道を選んだんだ。
今最高司令官という地位を失ったら、金だけで成り上がった無能な馬鹿か、ネシオル人は全て抹殺すべきと考えるイカレタ野郎がその地位に就いて、今よりもっと酷いことになる。
あの時あんな酷いことを言ったのも、兵の手前軍のトップが後ろ向きな発言をしたら士気が下がるし、彼らに迷いが生まれたら彼ら自身の生存率が下がっちゃうし……」
エクターは言う。
「だから、オレオ達にしたら言い訳にしか聞こえないけど、ケイさんは安易に戦争を始めたんじゃないってことだけはわかってほしい。好きで争いを起こそうとしてるわけじゃない。
ケイさんは自分が出来る最善の手は尽くしたんだ。尽くした結果がこうなったけど、必死で考えて悩んで努力したんだ。だから―――」
「わかってるよ」
二の句を遮り、オレオが発した言葉は肯定のものだった。