忘却の勇者

「僕もマリも、多分レインだってわかってる。ケイさんは軍人だし、民の危険を排除するのが使命だから。僕も同じ立場だったら、きっとそうしてたと思う」


だからあの時、なにも言えなかったんだ。


ケイの言い分も考えも想いも、全て理解できるし全て正しい。


だからこそ、迷っているのだ。


コーズの死を受けても揺るぎ無かった覚悟と誓いが、心の奥底でジリジリと痛みぶれるのだ。


「エクター、一つだけ聞いてもいいかな」


「ん、なに?」


「魔王を倒したら、この争いは止まる?」


答えなど聞かずともわかっていた。


この戦争の背景は、二カ国の深く長い負の歴史が根強く残っている。


引き金を引いたのは今回の魔王復活が原因だが、その原因を絶やしたとしても戦争が止まることはないだろう。
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