忘却の勇者

腰のポーチに手を突っ込み解毒剤はないかと漁っていると、少年の唇が僅かだが動いた。


掠れた声。急いで口元に耳を当てる。


搾り出すかのように、少年が言葉を発した。


「腹……へった……」


ガクッと思わず崩れてしまった。


だが少年の命に別状がないことを知り内心ホッとすると、コーズは少年を背負い元来た道を戻って行った。







コーズはまだ幼かった頃、両親と兄弟を盗賊に殺され、それ以来義賊として盗賊専門の盗賊として生活している。


そいつらから奪い取った金品は全て、元の持ち主に返しているとのこと。


盗賊の被害は全て各地に置かれた王国直属の治安維持隊へ連絡がいく。


隊の派出所がある街まで降りていき、持ち主不明の金品を手渡しているのだ。

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