忘却の勇者
十二年前は一面真っ白な美しい砂浜であったが、ケイが倒した魔物の残骸によって黒い大地へと変わっている。
荒く堅い粒子の砂は、とても砂浜とは呼べる代物ではない。
長い月日がたった今も、この黒い大地は健在している。
それほど魔物との死闘が激しかったということだ。
ジャリジャリと足音は立てる人物は、海岸の中ほどまで歩くと足を止めた。
黒いローブを纏った人物はフードを眼深く被っているが、彼は水平線の彼方をしっかりと見つめている。
いよいよ来るか。
ケイは視線を上に上げる。
右手を頭上にかかげると、手のひらから一本の光の柱が突き出し空に伸びる。
ぐんぐん伸びて行く光は、ある一定の距離まで進むとピタリと止まった。
刹那、頭上からガラスのような破片が降り注ぐ。
晴天の空から突如現れたのは、空に浮かぶ鉄の塊。