忘却の勇者
アレミラは未だにシールドを展開中。
ボールスはまだ視覚が戻っていない。仮に視覚が戻っても、彼の俊足を持ってしてもこの距離では間に合わない。
まずは一人。
右手が黒炎に包まれる。
あらゆる物質を焼きつくす地獄の業火。
アグロの頭部に右手を伸ばす……!
「……ほぅ」
感嘆の溜息が零れた。
黒炎に包まれた右手を遮ったのは、縦に二つに割れた大剣の片割れ。
いや、割れたのではなく外したのだろう。
元々二つであった剣を、アモール帝国の特異な技術力で一つの大剣に作り直したのだ。
大剣が二つに分かれたことにより、剣自体の重さが純粋に二分の一になり、片手でも容易に操れるようになる。