忘却の勇者
「まさか……!」
狼狽するボールス。
アレミラが耳につけたインカムに手を当てて交信を図るが、聞こえるのはザーザーという雑音のみ。
望む音は入ってこない。無機質な機械音のみ。
二人の顔色が青ざめる。
それもそのはずだ。なにしろあそこには―――
「先発部隊が全滅……」
アモール帝国から出航した、十隻の軍艦が待機中だったのだから。
水平線に見える水柱は十本。軍艦と同じ数。
敵の攻撃が届かない、領海外の安全圏内で待機をしていた先発部隊。
十二海里先の目標物を攻撃するなど常識では考えられない。ありえない。
ましてピンポイントで当てるなど、不可能だと言ってもいい。