忘却の勇者
だがもっともありえないのは、アモール帝国の最高戦力であるトップスリーを相手に、互角の戦いをしながら軍艦の存在を感知し、そして確実に仕留めたということだ。
しかも喪失魔術を使って。
終わったという言葉は、喪失魔術の発動準備が整ったという意味だった。
言葉の意味を悟った瞬間、アグロは生唾を飲み込んだ。
喪失魔術の噂は聞いている。四聖官はそれぞれ一冊ずつ禁書を保有しているという噂も軍部であった。
もしあれが本当に喪失魔術だったのなら、サイは喪失魔術の発動準備をしながら自分達と戦っていたことになる。
喪失魔術の発動には莫大な量の魔力が必要だ。
彼はその莫大な量の魔力を喪失魔術に注ぎながらも、他の魔法を使い自分達と戦っていた。
つまりサイは、本気など出していなかったのだ。
喪失魔術を、喪失魔術に必要な魔力をもし自分達に向けていたら……想像しただけ恐ろしい。
僅かに生まれた恐怖心。