忘却の勇者
すぐに払拭させたが、あのねっとりとした感情は心の奥底で残っている。
対峙する四人の間にはピリピリとした緊張が漂い、互いに威圧をしながら無言の攻防を続ける。
その沈黙を破ったのは、意外にもサイであった。
「鉄血の十三騎士を十人投入とは、お前達の指揮官は随分と慎重なのだな」
「なっ……!」
バレたのか。いや、バレていたのか。
もう隠す必要などなくなった。
アグロは剣を地面に突き立てると、それを合図にパリンという甲高い音が周囲に響く。
飛行艇の時と同じように、突如現れた人影は八。
まだ若い男女。中には年端もいかぬ少年も混じっている。
特殊な結界で姿を暗まし、ここぞという時を狙っていたのだ。
「卑怯だと罵ってくれてかまわない。だがあんたが喪失魔術を使った以上、悪いがこちらも全力でやらせてもらう」