忘却の勇者
こうしている間にも、戦争は進み魔王は力を蓄えている。
オレオの目的は魔王の討伐。
紆余曲折あったが、その使命は絶対的で普遍的なものだ。
「僕はただ魔王を倒したい、それだけだ。エクター達の邪魔は絶対にしないと誓う。だから頼む、ここから出してくれないか?」
「もし断ったら……オレオはオレを斬れる?」
「その程度の覚悟がなくちゃ、魔王は倒せないよ」
オレオは即答したが、エクターは見逃さなかった。
黒刀を握る手が、震えているのを。
もしエクターがオレオの頼みを断ったとしても、オレオは手をかける様なことはしないだろう。
それが彼の甘さであり強さである。
エクターは肩を落としながら溜息を一つこぼした。
―――さすがにオレも、そろそろ勇者の子守りは勘弁だ。