忘却の勇者

「ところで……オレオだっけ。ここらじゃ見ない顔だけど、どうして一人で森の中にいたんだ?」


「嗚呼、一人旅してるんですよ。前からこの大陸全てを見て歩くのが夢で、そしたら道に迷って森で遭難ってことに」


「へぇ、まだ若いのに一人旅とは男だねぇ」


酒場の主人が感嘆の声を漏らす。


だがコーズは気づいていた。少年が嘘をついていることを。


あちこちで魔物の活動が活発化している今のご時世、子供の一人旅など危険行為極まりない。


それに……。


コーズは舐めるようにオレオの全身を見渡す。


右手の薬指に嵌められた小さな指輪。


あれは異空間指輪(ディメンションリング)と呼ばれる物で、大量の荷物をその指輪に溜め込むことが特殊な魔具である。


コーズが腰に巻いてるポーチも同じ系統の魔具であるが、これは一般人が容易に手に入れられる代物ではない。
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