忘却の勇者
この扉をくぐれば、地下牢が現れる。
近代的な作りの扉にオレオは見惚れるが、すぐに神妙な面持ちにかわる。
扉を守る門番が二人。
門番はエクターの姿を見つけると会釈をするが、すぐに隣に立つ人物に視線を向けた。
「エクター様、その者は?」
見慣れぬ姿にいぶかしむ門番だが、エクターは笑顔でこう答える。
「嗚呼、十三騎士の候補生だ。今この基地の案内をしてるんだ」
そう言いながらオレオの肩をバシバシ叩く。
オレオは軍の制服に身を包んでいたお陰か、門番は疑いもせず「御苦労さまです」と労いの言葉をかけた。
どうやらバレていないようだ。
それもそうだろう。だって今のオレオは……。
女性用の軍服を纏っているのだから。