忘却の勇者
あまりにも希少で高値で取引されるせいか、一般の市場にはほとんど出回ることがない。
かくいうコーズも、昔狩った盗賊から拝借した物を使用している。
さらに腰にある剣。
あれは和の国で作られた『刀』と呼ばれる刃物の中でも最高位にある大業物の一品。
これも普通のルートでは決して手に入ることはない。
ただの旅の者ではない。あるはずがない。
色々と疑問に感じることは多々あるが、そこには触れずに何かを決意したかのように「よし」と一人呟いた。
「今日はもう日が暮れる。俺の家に泊まってけ」
「え? いいの?」
「おう、なんもないけどご馳走してやるぜ」
ドーンと自らの胸を叩く。
主人はなにやら意味深げな視線をコーズに送るが、大丈夫だという風にウインクをすると、オレオを引きつれ店から出て行った。
お代はもちろん、コーズのツケである。