忘却の勇者
「……ごめん、助けに来てくれたことには感謝するけど、それはないわ」
開口一番マリが放った一撃は、オレオの心のど真ん中を打ち抜いた。
三日ぶりに再会した少年が、女物の衣服を着ていたらそうも言いたくなるだろう。
オレオに会ったら色々と聞きたいことや話したいことがあったが、全て吹っ飛んでしまった。
なんで女装してるの? しかも……。
「可愛いとかまじ勘弁」
地味に似合っているので反応に困る。
驚きよりも呆れが先にやってきた。
自分達を助けるために、女装をして人の目を掻い潜って来たというのは察するが、やはり勇者が女装というのはなんだかヘンテコリンである。
似合ってはいるけれど、やっぱヘンテコリンだ。
まあいいや、助けに来てくれたのだから純粋に感謝しよう。
などと一人葛藤している最中、勇者贔屓のレインはオレオを物凄くベタ褒めしていた。