忘却の勇者
マリはしれっとしているが、エクターは顔引きつり、レインは満面の笑みで凄い凄いとはやし立てている。
何が起こったのかは、お察しの通りである。
「おいおい、素手で天井を破壊しやがった……」
出入口がないのなら、作るまでだ。
そして、
「っツ!?」
罪を被るのは自分達だけでいい。
手刀でエクターの頸椎を打ち付けると、彼の身体は崩れ落ちた。
痛みと眩暈が襲いかかり、視界はグルグルと回り視点が定まらない。
油断した。オレオがオレを襲うなんて。
床にうつ伏せになりながら、顔だけは上を向く。
オレオと目が合ったが、瞳には靄がかかり彼の姿をハッキリと写さない。