忘却の勇者
「ごめんねエクター。だけどこれ以上僕達に関わると、エクターの立場も危うくなるから」
「馬鹿……が……」
オレの立場なんかどうでもいいのに。最後までオレオ達の役に立ちたいのに。
ぶちまけたい想いはすぐ口元まで来ているが、喉が鳴らすのは乾いた空気。
言葉を紡ぐことはない。
「ケイさんには僕に脅されて仕方なくやったと言えばいい。僕が言うのもなんだけど勇者の力は未知数だから、多少は考慮してもらえるかもしれないし」
声にならない声を上げるが、乗せた想いは届かない。
オレはまだなにもしてない。なんの手助けもしていない。
コーズの謝罪も、まだしていない。
意識は朦朧としていくばかり。
世界が黒い闇に染まると、エクターは深いまどろみの世界へと墜ちて行った―――