忘却の勇者
折れている右腕を無理やり動かし、結界に触れた。
紅蓮の光が周囲を紅く染める。
「気でも狂ったか。結界同士ぶつけてもなんの意味も」
「それはどうかな」
言葉を被せたのは、地面に倒れたアグロだった。
「“アレ”は結界なんかじゃない……!」
ピシィッとひび割れる音が響く。
結界とシールドの境界面。そこに亀裂が走っている。
いくら強力なシールドとはいえ、盾と盾を突き合わせても亀裂が走ることはない。
つまりこの閃光は、防御魔法などではなく―――
「貴様、敢えて防御役に徹していたのか!?」
嵌められた。