忘却の勇者
「本当に大丈夫?」
「大丈夫だって。先を急ごう」
足を進めるが、ふとオレオは歩みを止めた。
顔を横に向けると、そこには藍色の光を放つ小さな泉が瞳に映る。
「どうしたの?」
「いや、マリは感じないの?」
「え、わからないけど……」
勘が鋭いマリですら感じないほどの違和感。
だがオレオはしっかりと感じ取っていた。
「あの泉から、極僅かだけど変わった魔力を感じるんだ」
「変わった魔力? 私はなにも感じないけど」
魔力に敏感なマリすら感じ取れない異変。