忘却の勇者

突然の提案に素っ頓狂の声をあげたのはマリだった。


「飛び込むって……正気?」


「うん。もしこの泉事態が転送魔法のファクターなら全て辻褄が合うんだ」


微量の魔力を放ち、凍ることがない泉。


カモフラージュと考えればオレオの言う通り辻褄が合う。


「もしこの泉が魔王の城への入り口だったら、もう引きかえることは出来ない。もし少しでも迷いがあったら、僕一人で」


「バーカ。今更なに言ってんのよ」


「勇者様一人で行かせるなんて出来ません!」


全てを言い終える前に、二人はズザッと言い切った。


オレオ一人で行かせない。自分達も戦うと。


嬉しさと、だけど少しの悲しみを含んだ笑みを浮かべると、オレオは「ありがとう」と呟き先行して泉の淵に向かう。


さあ行こう。
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