忘却の勇者

オレオは泉に身を投げると、マリとレインも続いて泉に飛び込んだ―――





瞼を上げると、そこは広い空間だった。


なにもない無機質な四隅。


壁は薄汚れ辺りには黒い靄がかかり、視界を黒く染める。


なにが起こったのか理解するのに時間がかかったが、全身から感じる禍々しい雰囲気に背筋に冷たいものが伝った。


オレオは感性が疎い人間だ。


生まれ持った性格か、はたまたそういう遺伝的なものなのかは分からないが、感情の起伏は少ない。


そんなオレオが、足を小刻みに震わせている。


この空間に飛ばされただけなのに、恐怖が心を包み込む。


多種多様の魔物の気配。死と闇が交差する感覚。


間違いない。ここは魔王の根城。
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