忘却の勇者
恐らく魔王はこの城の最上階にいるだろう。
聖剣を使えば大抵の魔物は大丈夫だろうが、油断は出来ない。
気を引きしめねば。
「急ごう。早くしないと戦争が長引く」
その時だった。
「それは困る」
コツコツと足音が階段から響き渡り、一人の男が姿を現した。
眼鏡をかけた端正な顔つきの男。
魔物しかいないと思っていたオレオ達だが、人の姿を成した生命体に戸惑いを覚える。
一瞬困惑するが、彼の言葉にオレオは眉間に皺を寄せた。
「大国同士の全面戦争。これから多くの人々が阿鼻叫喚を奏でるのだ。せめてもう少し楽しんでから魔王を討伐してもらえないかね少年。まあ、私がそんなことをさせないがね」
口の両端を不気味に吊り上げる。