忘却の勇者

言動とその様子から、相手が敵だということは予測できたが、男の姿がハッキリと写し出されると、レインは突如顔をしかめた。


少年の身体から冷気が溢れ、冷風が彼の身体を中心に吹き乱れる。


レインの激情した様子に二人はいぶかしむが、冷風は止まることを知らない。


「下衆な思考回路だな。魔王の手先に成り下がった哀れな人間め」


「ふふっ、口が悪い子供は嫌いだよ」


レインはこの男を知っているようだ。


絡み合う視線は互いに威圧感を放っている。


レインは前に出ると、氷の刃を生成しオレオに言い放つ。


「勇者様、ここは僕に任せて先を急いでください。こいつは僕が仕留めます」


「なっ!? なに馬鹿なことを言ってるんだ! 一人で戦うのは危険すぎる!」


「相手は人間です。聖剣は魔物にしか反応しないし、ここで時間を喰っていたらそれこそ奴の思い通りになる。僕なら大丈夫ですから先に!」


「でも……!」
< 442 / 581 >

この作品をシェア

pagetop