忘却の勇者
言動とその様子から、相手が敵だということは予測できたが、男の姿がハッキリと写し出されると、レインは突如顔をしかめた。
少年の身体から冷気が溢れ、冷風が彼の身体を中心に吹き乱れる。
レインの激情した様子に二人はいぶかしむが、冷風は止まることを知らない。
「下衆な思考回路だな。魔王の手先に成り下がった哀れな人間め」
「ふふっ、口が悪い子供は嫌いだよ」
レインはこの男を知っているようだ。
絡み合う視線は互いに威圧感を放っている。
レインは前に出ると、氷の刃を生成しオレオに言い放つ。
「勇者様、ここは僕に任せて先を急いでください。こいつは僕が仕留めます」
「なっ!? なに馬鹿なことを言ってるんだ! 一人で戦うのは危険すぎる!」
「相手は人間です。聖剣は魔物にしか反応しないし、ここで時間を喰っていたらそれこそ奴の思い通りになる。僕なら大丈夫ですから先に!」
「でも……!」