忘却の勇者
レインを止めようと伸ばした腕は、マリに掴まれ封じられた。
「行きましょう」
「行くって……レインを置いてなんて行けないよ!」
「きっと魔王にも私達が侵入してきたことは伝わっているわ。モタモタしてたら魔王が逃げてしまうかも知れない。魔王を倒す唯一無二のチャンスを棒に振るつもり?」
優しく諭す言葉には、強い気持ちが込もっている。
目的を見失うな。魔王を倒せるのは貴方しかない。
そう暗に言われている気がして、オレオは反論の言葉を飲み込んだ。
そうだ。こんなチャンスは二度とないんだ。
今考えられるもっとも最悪なシナリオは、魔王を逃し見失うこと。
火種を残せば何れまた燃え上がる。
それだけは絶対に阻止しなければならない。
「……わかった、行こう。レイン」