忘却の勇者

男と対峙するレインに声をかける。


「道中の敵は僕達が片付ける。そっちが終わったらすぐに合流しよう」


「わかりました、すぐに迎います。マリ、勇者様を頼む」


「言われなくたってそのつもりよ」


不敵に微笑むと、二人は駆け出して行った。


その様子を黙って見守る謎の男。


てっきり邪魔をするものだと思っていたレインは、首を傾げながら毒を吐く。


「勇者様と戦うのがそんなに怖いか? ガキ相手になら勝てると思っているのなら、その時点で貴様の力量などたかが知れているがな」


「随分噛みついてくるじゃないか。初対面の相手に暴言とは、親のしつけがなっていない」


「初対面?」


ピクリと、レインのこめかみが動いた。


「覚えていないのか? 貴様が僕達家族に何をしたのか、忘れたとは言わせない!」
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