忘却の勇者

咄嗟に氷刀と自らの手を氷結させて固定し、なんとか氷刀を手放すことはなかったが、大人であるオメガの太刀を全て受けきるのは難しい。


僅かな隙を突かれ、がら空きになった腹部に左手の拳が突き刺さる。


が、痛みを負ったのはオメガの方だった。


咄嗟に腹部に氷を纏い、その氷が防護服の役目を果たしたのだ。


口笛を鳴らすオメガ。


だが防護壁は衝撃を完全に吸収することは出来ず、氷の鎧は簡単に砕けた。


「やるじゃないか、魔王の下僕にしてはなかなか」


「ふふっ、君に悪態をつく余裕があるのかな?」


事実その通りだ。


レインは距離をとろうと後退するが、オメガは問答無用に攻め込んでくる。


右へ左へ、流れるような怒涛の連撃。


太刀筋を読みなんとか防ぐだけで精一杯。
< 449 / 581 >

この作品をシェア

pagetop