忘却の勇者

戦いを楽しんでいる瞳。否、オメガからしたらこの命のやり取りもお遊び程度にしか思っていないのだろう。


「駄目だ、全然駄目だ。魔力もコントロールもド三流。状況に応じた判断力も応用力も皆無ときている。
こんな青臭い戦術で私を倒せると思っているのか? ふっ笑止。酒の肴にもなりはしない。
彼と似たような氷結魔法を使うから多少期待はしていたのだがな、これでは雲泥の差だ。坊やの力は彼に遠く及ばない」


舌打ちをすると、レインは氷刀を地面に突き刺した。


「意味不明なこと喋ってんじゃねえよ!」


氷刀を通じて魔力を放出すると、オメガの周囲の床が青白く輝き、そこから氷山が生まれた。


囲むようにそびえ立つ氷山は、天井にまで達しオメガを完全に封じている。


力を使い過ぎたのか、レインは息を荒げ氷刀にもたれるように片膝をついた。


あれは単なる時間稼ぎ。オメガの動きを封じるための氷の牢獄。


もう少しだ。もう少しで―――


「時間稼ぎとは逃げに入ったな」
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