忘却の勇者
封印術の解除で私と四聖官との協定は達成されたが、奴らが今後どのような行動を起こすのか気になったのでな。わざわざ聖者の称号を取り、軍内部へと侵入したわけだ。
無論このまま奴らの手駒になるつまりは毛頭ない。
死者を蘇らせる喪失魔術。あれはぜひとも手に入れたい。
死者を蘇らせることが出来れば、同一人物を好きな時に好きなだけ飽くるまで殺し続けることが出来る。最高だ。実に素晴らしい。
殺して殺して殺して殺して、考えられる殺戮方法が尽きるまで殺し続けて、死者の魂を徹底的に愚弄するのだ。
どうだ、魂の有効活用とは思わないか?
人間ほどつまらない生物などいない。繰り返される毎日を謳歌することになんの意味がある。それは死と同義だ。
だから私が直接手を下す。思い知らせてやるのだ。自分達がいかに生温い世界の中でぼんやりとその日暮らしの実につまらない毎日を過ごしてきたのか。
死をもって理解する。そして死という快楽に溺れるのだ。
彼らは思い知る。平和だなんだと言ってきた年月が、神に与えられた呪縛だということを。
そう、神だ。死をも超越し私は本当の意味で神を超える! 私が世界の支配者となり管理者となるのだ!」
レインを乱暴に投げ捨てる。
床に倒れたレインは首元を押え、咳き込みながらも必死に酸素を求めた。
後数秒話しが続いていたら、こうして息をすることもなかっただろう。
オメガは唇を舐めると、レインを見下ろしながら口の両端を吊り上げた。
「そのためにはまず邪魔者を消す必要がある。だが敵は強大だ。私の力を持ってしても勝算は五分といったところだろう。
考察してみよう。私と彼らの力量がなぜ互角であるかということを。
答えは簡単だ。彼には喪失魔術がある。つまり禁書を保有しているからだ。
ならば私も禁書を手に入れ、喪失魔術を会得すればいい。その時点で私は彼らを超える。死者書生の禁書も手に入るというわけだ」