忘却の勇者

たった一人の家族が寝たきりになったのだ。辛いのは当たり前。


「悪いな、嫌なもん見せちまって。なぜだかミウとオレオを合わせたくてな。って、寝たきりだからミウはオレオのこと見れねーんだけど」


自嘲気味に微笑む。


オレオはミウに近づくと、自分の手を彼女の額に当てた。


コーズは不思議そうにその光景を見ているが、構わずオレオは意識を右手に集中させる。


この部屋に入ってから、なんとなく違和感を覚えていた。


禍々しい、強力な魔力。


彼女の部屋からは魔具らしいものは見当たらない。そしてその魔力は、彼女の周辺から発せられている。


もしやと思いオレオは魔力探知をミウの身体にかけてみた。


……これは!


ビンゴ。額から手を離す。


コーズに視線を向けると、淡々とした口調で喋り始めた。
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