忘却の勇者
このまま突き進んでいけば、最上階まであっという間だ。
濃い紫色の大蛇の風貌をした魔物を切ると、階段の終末点が見えた。
階段を昇り切ると、また広い空間が出現した。
魔物だらけだった道中だが、そこには魔物の姿は一匹もいない。
代わりに一室の中央に立つ一人の人物が視界に入る。
薄暗い空間で輪郭はハッキリとしないが、徐々に近づき表情が見えると、オレオとマリは同時に顔をしかめた。
二人にとってもっとも合いたくない人物。
灼銅の魔人の異名を持つ、十刀流のイクト。
「やあ、久し振りだな勇者殿。まさかこの場所が割れるとは思ってもいなかったぜ」
「お前か……」
奥歯を噛みしめる。
奴は魔物憑き。肉体は人間であるため、聖剣の攻撃は通じない。