忘却の勇者
聖剣を背中に納め、腰の黒刀を抜きとった。
「弔い合戦ってか? クソみたいな手下を持つと、勇者様も大変だな」
「貴様っ!」
一歩踏み込んだ瞬間、何者かに肩を掴まれた。
顔だけ後ろを向けると、決意に満ちた瞳がオレオを捉えていた。
「オレオは早く上に行って。こいつは私が片づける」
「片づけるって」
「私に任せて行きなさい!」
言葉を被せてマリが言い放つ。
相手はコーズを殺した元騎士団員。
一度だけ手合わせをしたマリも、イクトの強さは重々承知だ。
あの時はコーズと二対一で、不意をついた戦略でなんとか動きを封じただけ。