忘却の勇者
「……わかった。危なくなったらすぐに逃げて」
「残念ながらすぐに追いつくわよ」
笑みをかわしてオレオは上層へと走り出す。
だがそれをイクトが黙って見守るわけがなく、抜刀してオレオへと襲いかかるが……。
「六角錠牢!」
光り輝く六本の柱が、イクトを金色の監獄に閉じ込めた。
「早く行って!」
「うん。気をつけて!」
オレオは階段を駆け上がり、その姿は見えなくなった。
動きを封じられたイクトはその様子を静観すると、剣を鞘に戻してマリに向き直る。
すると光の壁に亀裂が走り、次の瞬間粉々に砕け散った。
マリは反射的に足元に目をやると、床には怪しい光を放つ魔法陣が浮かび上がっている。