忘却の勇者
けれどマリには、そのどちらも出来ぬだろう。
「打つ手なしだぜお譲さん」
挑発するイクトだが、マリは一笑に付すと左手を胸元に添えた。
「確かに、私の魔力じゃ魔封陣を解除することはできない。だけどね」
青い炎が灯る。
マリの左手から突如生まれた小さな灯は、徐々に勢いを増して全身を覆い込んだ。
「異界の者ならどうかしら?」
突然の発火。青い炎。
青い炎など自然に生まれることはまずありえない。けれど、魔封陣によって魔法は使えないはず。
いきなりのことでイクトは動揺するが、マリの発した言葉によって、脳裏にある単語が思い浮かんだ。
「契約獣? まさか……」
それは絶対にありえない。もしそうだとしても、魔封陣の中で召喚など―――