忘却の勇者

「顔色が悪いわね。不思議で不思議でしょうがないって顔よ」


「黙れ! そんなハッタリすぐに打ち消してくれる!」


抜刀し、剣をマリに向かって投げつける。


真っ直ぐに向かう鋭利な切っ先は確実にマリを捉えたが、数十センチ手前で青い炎によって遮られた。


剣は重力に従い、カランと音を立てて床に転がる。


「なに者だお前……なぜ契約獣を!?」


「教えてあげるわけないでしょ。私と貴方は敵なんだから」


青い炎に包まれながら、少女は不敵な笑みを浮かべる。


契約獣とは召喚術によって異界に呼び出されたモンスターのことを差す。


召喚獣と呼ばれることもあるが、モンスターの欲するもの(主に術者の魔力)を捧げることによって異界から呼び起こすため、魔術師の間では契約獣と呼ばれることが多い。


術者は契約獣と“契約印”を結び、契約獣が欲するものを捧げることによって契約獣を異界より召喚する。
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