忘却の勇者

あまりに高度で希少な魔術なため、魔法先進国であるネシオル王国でさえ、召喚術を会得しているものは数えるほどしか存在しない。


天才と謳われるあのサイ賢者でさえ、召喚術のスキルがないのだ。


それを目の前の少女が発動している。常識では考えられない光景である。


マリが魔封陣の中で召喚術を発動できたのは、召喚術の発動が術者の魔力を介さないというのが要因だ。


契約印は常に異界に住む契約獣と繋がっており、術者の呼びかけに応じて契約獣が自らの意思でこちらの世界へやって来る。


そのため召喚術の発動、つまり契約獣の召喚は基本的に契約獣の魔力で行う。


契約獣の魔力が魔封陣の魔力を上回っておれば、召喚も可能というわけだ。


だが、思っていたよりもイクトの魔封陣は強力のようで。


「まあいい、不完全な召喚などおそるるに足らぬ。そうだろう召喚師殿」


青い炎こそ現れているが、肝心の契約獣の姿はない。


魔封陣の効力が強く、契約獣の能力の一部を借りることしか出来なかったのだろう。
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