忘却の勇者

「この炎さえあれば十分。少なくともその無意味な十本の剣よりかは有効価値があるわ」


「今の内にほざいていろ。貴様の首を勇者の前に差し出してやるよ!」


イクトは駆け出し、床に落ちた剣を拾い上げると、そのままマリに向かって切りかかる。


マリは青い炎を操りイクトに浴びせるが、炎に直撃したというのにイクトの進撃は止まらない。


剣先がマリの心臓を捉えると、勢いそのままに切っ先が心臓を貫いた。


確かな感触。溢れる鮮血。


呆気ない。契約獣の力などこの程度か。


身体に纏わりついた青い炎。


だがそれは熱を帯びておらず、全くといっていいほど痛みなどない。


魔物憑きの身体と魔封陣の影響で威力が抑えられたのだろう。


剣を引きぬく。


と、マリの身体に纏っていた青い炎が傷口に集中し始めた。
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