忘却の勇者
ではマリの不死鳥はどうだろう。
癒しの炎によって、イクトの攻撃は実質無効化。
だが逆に、マリも攻撃に転じることはできない。
不死鳥の癒しの炎は所謂回復魔法の強化版。
細胞を強制的且つ爆発的に活性化させて傷を癒すというもので、不死鳥自身は攻撃手段を持っていない。
マリも召喚中は魔術を使うことはできない。
召喚状態で守りに徹するマリと、魔物憑きという強化された肉体で攻撃に徹するイクト。
持久戦にもつれ込んだ場合、どちらが有利かは明白である。
それはマリも十分理解しているだろう。
理解しているうえで、この場を引きうけたのだ。
「そうね。だから私も攻めに転じさせてもらうわ」
「攻め? 回復しか能がない契約獣でどうやって俺を―――」