忘却の勇者

刹那、イクトの身体に異変が起こった。


身体の内側が熱を持ったように熱い。


熱いなんてもんじゃない。これは灼熱。身体の中にマグマが煮えたぎっているような錯覚に陥る。


なんだこれは? なんだこれは?


痛みの余り膝をつく。


思考を巡らせるが、激痛に意識を持って行かれ回答など出やしない。


魔物憑きの身体でなければ、痛みで気を失うどころかショック死していただろう。


「貴様……俺になにをした!?」


「教えるわけないでしょ。そのまま癒しの中で死に絶えなさい」


癒しの中で死に絶える?


マリが何気なく放った言葉に、イクトは違和感を覚えた。


“癒し”と“死”
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