忘却の勇者
矛盾し相対する言葉を、彼女は繋げた。
この状況で言う“癒し”とは、おそらく不死鳥の青い炎を差しているだろう。
マリは常に癒しの炎を身に纏い、それがイクトの攻撃を無効化している。
だがイクトの身体にも、その青い炎が灯っている。
イクトの攻撃を防ぐために放った炎。
……違う。この炎に威力がないのはマリも知っていたはずだ。
ではなぜ傷を癒す炎をイクトに放った?
目暗まし? けん制?
だが癒しの炎を敵に纏わせてはデメリットしか残らない。
謎はまだある。痛みがなぜか身体の内側から起こっていることだ。
もしこの炎が攻撃に転じる威力を持っていたのなら、外部に痛みが走るはずだ。
では痛みの原因はこの炎ではない? だがマリは召喚中、他の魔術は発動できない。