忘却の勇者

「あっけないものだな。封印が解かれて実に数百年ぶりの対人戦だというのに、こんな所で呑気にお昼寝とは興が冷めたわ。
もう少し骨があると過大評価していたようだ。所詮はガキか。面白みがない。
さて坊や、かくれんぼはもう終いだ。私にも一応予定があるのでね。そろそろ終焉といこうじゃないか。
マスターキーを使って、煮えたぎるマグマの中に突き落としてやろうか?
一度やったことがあるが、その時は君ぐらいの若い子供と相対していてね。彼らの断末魔を拝むことができなかった。
代わりに君の悲鳴で我慢するとしよう。だがその前に、もう一・二本手足をもぎ取ってからにしようかな?」


右手の剣が怪しく煌めく。


レインは自嘲気味に笑みを浮かべると、残り少ない体力を言葉を紡ぐことに使用した。


「そう、だな。終焉といこう。望まぬ結果ではあるが……」


レインは言う。


「共に地獄へ堕ちようか!」


オメガの視界は鮮血に染まる。


縦横無尽に展開された鮮血色の刃が隙間なくドーム状に形成され、オメガ一人がドームの中で孤立している。


全方位から感じる強力な魔力。殺意。
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