忘却の勇者
当惑するオメガ。
馬鹿な……あのガキに術を発動させる魔力など残って……。
ふと、ある仮説が浮かび上がる。
「まさかお前、自分の命を使って……!」
鮮血の壁を通して聞こえる焦りの声色。
アモスから授かった禁書を擦りながら、レインは小さな声で答えを返す。
「言っただろ……共に地獄へって」
喪失魔術―無限剣舞―
アモスがイクトへ放った時は、彼の命を奪うことまでは出来なかったが、それは魔物憑きという特殊な例。
ずば抜けた戦闘能力と魔力を持っているオメガだが、所詮彼は人間に過ぎない。
神だなんだと言ってはいるものの、肉体は普通の人間と変わらない。
まともに喰らえば、オメガとはいえタダでは済まぬだろう。