忘却の勇者

結界の反動が強すぎる。


床に転がる黒刀を一瞥し、オレオは聖剣を使わなくて良かったと内心ホッとした。


もし強度にのみ重点を置いた黒刀でなく聖剣を使っていたら、今頃刀身は真っ二つに折れていただろう。


参ったな。これじゃあ扉を突破できない。


試しに素手ぶち破ろうとしてみたが、すんでのところで思いとどまった。


全力で破壊しに行ったら、逆に自分の手首が破壊されるだろう。


黒刀を拾い上げ、思案する。


ふと何かを思い立ったオレオは、コートの下からある物を取りだした。


漆黒の異形な鍵。コーズから受け取った大事な神器。


“あらゆる呪縛を解き放つ力を持つ”


コーズの妹が口にした言葉。


あの時は一種のお守りのような物だと思っていたが、お守りにしては“呪縛を解き放つ”という効力は少し異様ではないだろうか?
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