忘却の勇者

オレオの視線の先には、ミウの顔元に置かれている一体のクマのぬいぐるみがあった。


「さっきから妙な魔力をこのクマから感じるんだけど、これってどこからどう見ても魔具じゃないよね?」


切っ先でぬいぐるみをツンツンする。


オレオの顔は、今まで見たことがないほど清清しい表情だ。


なにやら先ほどから、ぬいぐるみから変な汁が溢れている。心なしか小刻みに震えているようないないような。


ツンツンツンツン、もう分かっているのにぬいぐるみを虐めている。


この子、鬼畜だ……。


絶賛ドン引き中のコーズである。


優しい人ほど裏があるというが、まさにオレオはその典型的なパターンだと理解した。


「悪夢を見せながら少しずつ魂を削り取る。エゲツないことをするもんだね」


「いや、お前も大概エゲツないと思うぞ?」


コーズのツッコミも華麗にスルーして、黒刀を振り上げる。
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