忘却の勇者

「確証はなかったがな。だがもういい、もう十分だ」


沈黙。


イアンは微笑を浮かべ、目を細める。


「いつか話そうとは思っていのだよ。ただ“魔王復活計画”は君が四聖官に任命される前に実行されたものだったのでな。計画の全貌を語る機会を探っておったのじゃ」


「戯言はよせ。目的はなんだ」


「目的など明白だ。我が国の平和のために決まっておるだろう」


言動が一致しない回答。


国の平和のために、なぜ人類の敵である魔王を復活させる必要がある?


現に魔王の被害はネシオル王国でも小規模だが発生している。


軍の指揮で主要都市の治安は維持されているが、軍の目の届かぬ山奥の農村は格好の餌食となっている。


だがサイは、言葉の裏に隠され真意に感づいていた。


魔王による一種の恐怖政治。
< 496 / 581 >

この作品をシェア

pagetop