忘却の勇者
「確証はなかったがな。だがもういい、もう十分だ」
沈黙。
イアンは微笑を浮かべ、目を細める。
「いつか話そうとは思っていのだよ。ただ“魔王復活計画”は君が四聖官に任命される前に実行されたものだったのでな。計画の全貌を語る機会を探っておったのじゃ」
「戯言はよせ。目的はなんだ」
「目的など明白だ。我が国の平和のために決まっておるだろう」
言動が一致しない回答。
国の平和のために、なぜ人類の敵である魔王を復活させる必要がある?
現に魔王の被害はネシオル王国でも小規模だが発生している。
軍の指揮で主要都市の治安は維持されているが、軍の目の届かぬ山奥の農村は格好の餌食となっている。
だがサイは、言葉の裏に隠され真意に感づいていた。
魔王による一種の恐怖政治。