忘却の勇者
「貴方にとっては候補生も家畜以下のゴミなのか? この国必要な人材は、高い魔法技術を持った人間じゃなかったのか?
魔力を奪い取り、挙句の果てには切り捨てる。平和という言葉を盾に、自身の権力を横暴して力を誇示したいだけではないか!」
「少し違うな。結果的に彼らは命を落とす羽目になっただけだ。半永久的に魔力を供給し続ける優秀な電池をみすみす殺すことなど私はしない。
彼らは禁書の暴走により魔力を全て吸い尽かされて干からびたか、急激な魔力の低下に身体がついていけず死んでしまったかのいずれかだ。
己の無力さが巻き起こした単なる事故さ」
「そうなることを知っていた上で行ったのだろう。外道め」
「……どうやら、我々の溝は決定的なもののようだな」
互いの想いが交わることはありえない。
イアンの身体を中心に、魔力の渦が大気を巻き上げ風を起こす。
殺意を纏った魔力が吹き乱れ、淡い七色のステンドグラスは粉々に吹き飛び跡形もなくなった。
「計画は大きくズレたが、まだ修正は効く。貴様のような若造に、我々の崇高な計画を邪魔されてなるものか!」
愚かな。修正などもう出来ぬというのに。