忘却の勇者
「いや、知らぬというのは建前か。我々が勇者暗殺を企んでいたのを感づき、先回りをしたのだろう? まさかベモスを倒すとは思わなかったが」
あの場にサイが居合わせたのは偶然ではない。
全ては必然。オレオを守るために、あの場に駆けつけた。
そしてアモスも、四聖官の不穏な動向を嗅ぎ付け、オレオ達をアモール帝国に追いやったのだろう。
サイが眼を光らせていたお陰か、それ以降オレオの暗殺はなされなかったが、代わりにイクトという人物が現れた。
四聖官ではなく、魔王からの刺客。
サイの抑止力もいずれ弱まる。
四聖官と魔王、両者から狙われればオレオも無事では済まないだろう。
だからアモスはアモール帝国に旅立たせた。
国内では感知魔法によって常に四聖官に監視されるが、遠く離れたアモール帝国ならその範囲外。
敵対国で大それたことも出来ぬはず。