忘却の勇者
喪失魔術には及ばないが、それでもまともに喰らえばまず生きてはいまい。
それでもなお、サイは魔力を練り直し次に備える。
術の威力は本人が一番理解している。
理解しているからこそ、次の一手を考える。
光の柱から見える黒い影。
影は駆け出し、一目散にサイへ襲いかかる。
正体は無論イアン。サイの攻撃は効いていない。
早い……!
結界を張る暇など与えない。
電光石火の早業で距離を詰め、拳を作る。
ほぼ零距離まで詰められが、サイは白銀の剣を瞬時に練成し対抗する。
だが極限にまで強化された肉体に、急ごしらえの刃など届かない。