忘却の勇者
イアンの左腕にその攻撃を防がれると、魔力を帯びた拳がサイのみぞおちを抉るように捉えた。
豆腐のように突き破った拳は腸を掴む取り、左手でサイの身体を押さえながら引きずり出す。
血色の良い小腸が外気に触れ、鮮血と薄黄色の体液が薄気味悪く微笑むイアンの顔に撥ねる。
消化器官と共にいつくかの内臓がボトボトと零れ落ち、絵も言えぬ悪臭が鼻をついた。
いくらサイとはいえ、臓物を抉られれば死ぬしかない。
冷笑を浮かべるイアン。
と、サイの身体が不自然に震え出す。
引きずり出した臓物が意思を持ったように動き出し、一瞬にしてイアンの身体に巻きつき纏わる。
さらにサイの身体はブクブクと膨張し、ゴム風船のように膨らみ始めた。
「擬似トラップ!?」
サイの身体が紅く発光すると、次の瞬間大爆発が巻き起こった。