忘却の勇者
爆発の瞬間、球体の結界がイアンを覆い、爆発の衝撃は一カ所に集中。
結界が解かれると、居場所を求めるように暗煙が広がり、パラパラと細かい粒子が床に落ちる。
「流石攻撃魔法のエキスパート。様々な魔術を用意している」
粉塵の中、無傷のイアンが声をかける。
見つめている先は空席の長椅子。
と、その長椅子に腰かけるサイの姿が、徐々に色彩を帯び現れた。
やはり効果がないか……。
いくら肉体を強化しているとはいえ、サイの攻撃を直撃して無傷というのはありえない。
自己再生の魔術を全身に纏っているのだろうが、だとしても腕の一本や二本は犠牲になるはずだ。
喪失魔術・死者蘇生をアレンジし、若き肉体を手に入れたイアン賢者。
健全な魔力は健全な肉体に宿ってこそ真の力を発揮する。
イアンの魔力が底上げされるのは必然。